Search

「時計のひと針を写真に刻む」。七夕に響く、写真家、市川勝弘さんのひとこと

すごろくラヂオの記念すべき初ゲストスピーカーは、写真家の市川勝弘(いちかわかつひろ)さんにご登場いただきました。テーマは市川さんが今年(2021年)7月にお仲間とともに行うプロジェクト「七夕写真館」。前回(2015年)の様子とともにお話をうかがいました。



・・・・・・・・・・・・・


「七夕写真館」というすてきな名称のプロジェクトは、仲間の一人が運営する小さなギャラリーを七夕の数日間だけ写真館にしてしまおう!という企画です。


そして「七夕なんだから写真撮影を申し込んでくれた人に、短冊に願いを込めるように手紙を書いてきてもらおう!」となったそう。手紙に込めた思いをもってカメラの前に立っていただくんですね…。


「手紙を書くということは、自分を見つめなおすことになりますよね。自分の字にも個性があらわれる。大切な人を頭の中に思う浮かべて書くということは大変な作業です。


それは僕が「日常」写真展の中で行ったスマイルプロジェクトで書いてもらった時もそうだった。みなすごく葛藤していた…」


市川さんの多彩な活動のなかで大きな反響を呼んだ企画に「日常」写真展と「スマイルプロジェクト」があります。


放送では時間の都合で触れませんでしたが、市川さんは、奥さんの福島県楢葉町の実家に帰省するたびクラシックなカメラを手に日々の暮らしや田園風景を撮影し続けてきました。ところが震災の原発事故で奥さんのご実家は避難を余儀なくされ、日常の暮らしが失われてしまったのです。


美しい田園風景とともに日々の何気ない暮らしをつづった写真が意味を持つものになってしまったのですね。「日常」写真展はそのようにして生まれました。


一方、市川さんがライフワークとする「スマイルプロジェクト」は、この写真展の会場でスタートしました。こちらは会場に簡単なスタジオを作り、来場者を撮影してその場でプリントアウト。余白に福島や東北の被災地へのメッセージを書いてもらい、会場に張り出すというものです(1枚はご本人用のお土産に)。


どちらも多くの場所で開催され、大きな反響を呼んできました。私、パーソナリティの片方の浅野里香は、震災直後のアロマボランティアで市川さんの「日常」写真展と何度となくコラボさせていただいた経緯から、スマイルプロジェクトを間近で見てきました。


本当にみなさん、自分の顔がプリントされた紙を前にペンを持ったまま考え込んでしまう…。自分の写真とともに表明する言葉というのは、心の深いところを探らなければ出てこないのかもしれません。




それが「七夕写真館」では「手紙」に進化しました。参加者の方々はどのような思いでカメラの前に立つのでしょうか。了解を得られた方は手紙も撮影するそうです。


「前回は、僕の友人が奥さんにあてた手紙とその奥さんが僕の友人にあてた手紙とか、生まれてくる子どもたちへの手紙、亡くなっただんなさんにあてた手紙もありました。たった一枚の手紙なんだけど、手紙を読んで、撮影した時のその人の顔を思い浮かべると人生が垣間見える…。ちょっと泣けてしまいました…」


「七夕写真館」というプロジェクトは、「手紙」によって主催する側と参加する側が一体となる企画なんですね。「企画が素晴らしい」ということで今回参加する方からメッセージをいただいたそうです。ラジオでも読み上げましたがここでも紹介します。詩人の吉成虎維(よしなりとらい)さんの言葉です。


「七夕写真館、賑わうね!

世の中はコロナ禍の只中、五輪の直前、さらには毎日が何かの記念日に埋められている。

しかし、誰しも、一人の人間として過去と未来の間に在り、胸にそれぞれの時計をもっている。

ある季節のそれぞれの時間、を写真に収めてもらおうと集う、人々。

私は私の時間をもっているんだよ、という申込みをされた方々のさりげない意思表示のようにも思ってしまうのは深読みのしすぎだろうか。

いやはや、すばらしい企画です!」


このメッセージに心から感動したという市川さん。ラジオではこんなふうに語ってくださいました。


「時計というのは人生にたとえられるのかなと思いました。季節というのは人生の中のいろいろな時代。いまの季節のめぐり逢いのなかの、大きな流れのなかの時計のひと針が『写真を撮る』ということなのかな…。そんなふうに感じました」


「一人一人の時計のひと針があるんですよね。どこでそのひと針を刻むか=シャッターを押すかと考えると、こう…こっちもシャッターを押す重みが違ってきますね。笑」


詩人のお知り合いの言葉もすばらしいし、その言葉に共鳴して写真表現へとつなげていく市川さんの感性もすばらしいですね。


市川さんは周囲から「市川さんが撮った写真は市川さんが撮った写真だとわかる」といわれるそうです。


放送では今回の企画にふさわしい特別なカメラの話もお聞きしました。興味深かったのは「同じカメラでも撮影する人によって写真の仕上がりは違ってくる」という話題。それが写真表現ということなんですね。その違いはどこからくるのでしょう?


市川さんが被写体(人だけではなく風景も)を見つめるまなざしに、市川さんの人間性があらわれるから?


写真が会話であるともいえるかもしれません。もちろん表現に落とし込むための技術も必要でしょう。


この答えはまた、別の機会に再登場いただいて、ともに探りたいと思います。市川さんありがとうございました。それからこんなに長いブログにお付き合いいただいた方にもお礼を申しあげます、ありがとう。


(あさのりか)


31 views0 comments

Recent Posts

See All

(wrote by Rika Asano) 「一人で看病してきて大変でしたね」 家族の入院先の看護師さんが、重い荷物を受け取りながら何気なく放った「ひとこと」にどれほど救われたか。 そう中林里花さんは話してくれました。一瞬にして孤独感から解放されたのだろうな、少しの間立ち尽くしたかもしれないな。 とけていくようなその感覚が手に取るように分かったのは、夫の看病から看取りの過程で私、浅野里香にも同じ経