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​「文字」で残す・・・配信後記など

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すごろくラヂオ、通称「すごラジ」の3回目放送のゲストは料理研究家のクリコさんをお迎えしました~。パチパチパチ!!!!


クリコさんは料理研究家であるとともに介護食アドバイザーでもあります。


介護食? それってなに?


クリコさんも9年前まで「介護食」という言葉を知らなかったそうです。なぜ知ったのでしょう? 実はクリコさん最愛のだんなさんが、口の中の癌にり患し舌や歯茎を切除することになってしまったのです。術後はおかゆ一杯食べるのに1時間以上かかり、全部食べ切らないうちに疲れて「もういいや…」となってしまったそう。


放送ではすべてをお伝えできませんでしたが、この時だんなさんはもう一つ大切な手術を控えていました。食べられなければ体力が回復せず手術を受けられません。


どうしたらいいんだろう? クリコさんはだんなさんが入院していた病院の嚥下専門の看護師や区役所にアドバイスを求めたり、ネットで調べたり、料理書を探しまわりました。そんななかで知ることになったのが「介護食」という言葉でした。ご高齢の方など飲み込みが困難な人のための食事のことです。


ところが自分の求めるものが「介護食」と言われるものだと分かったものの、見た目も味もおいしくて、しかも柔らかくて食べやすい…というレシピは、当時はまだなかったんですね。


「もうこれは私が作るしかないんだ!おいしい、たのしい、もっと食べたい!と思うような食事を作ろう!」


妻として料理研究家として、クリコさんの魂に火が付きました。









そして出来上がったのがこの写真のような「クリコ流ふわふわ介護ごはん」というわけです。どうですか?おいしそうですね~。実際食べたことがあるもう一人のパーソナリティの中林さんに言わせると「むっちゃおいしい!」そうです。どれも舌でつぶせる柔らかさなんですよ♪♪♪


「おいしい! クリコ天才!」

だんなさんも食欲を取り戻し、みるみる体力が回復したそうです。まさに「食べることは生きること」と、クリコさん、心の底から実感したそうです。


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そんなクリコさん、いま新たな挑戦をしています。

なになにどんなこと? それが食のバリアフリー! 放送ではこっちが本題でした。


皆さんも歯茎が腫れて流動食しか食べられないとか、のどが痛くて硬いものが食べられないという経験を一度や二度はしたことがあると思います。


そんな時どうしましたか? スーパーの食品売り場に行って、食べられそうなものを求めてウロウロさまよいませんでしたか?


高齢になると、それに近い状態になるわけです。噛む力が足りない、飲み込む力が足りなくなって柔らかいものしか食べられなくなる。


でもどうでしょう? コンビニやスーパーのお総菜売り場・食品売り場には高齢者向けのおかずやお弁当は置いていません。そういう視点がないんですね。


こんなに高齢化社会が進んでいるのに、私たちを取り巻く状況はクリコさんが見た目も味もおいしい介護ごはんを開発しようと決心した当時とあまり変わっていません。


「世の中にないなら私が作る!」


またまたクリコさん、今度は食品メーカーに作って販売してもらえるようなレシピの開発に注力することを決心!


(きゃ~ステキ! 惚れる! 笑)


さらにさらにおいしくしたとのことで、試作品はさまざまな年齢層の人に高い評価をいただいたそう。


放送ではその開発にかける情熱や、食材の詳しい話、クリコさんの思いを熱く語っていただきました。


どうぞこのブログとあわせて味わってください。


クリコさんの「特製デミグラスソースの煮込みハンバーグ」を近所のイトーヨーカドーで買える日が一日も早く来ますように。


Written by Rika Asano

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すごろくラヂオの記念すべき初ゲストスピーカーは、写真家の市川勝弘(いちかわかつひろ)さんにご登場いただきました。テーマは市川さんが今年(2021年)7月にお仲間とともに行うプロジェクト「七夕写真館」。前回(2015年)の様子とともにお話をうかがいました。



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「七夕写真館」というすてきな名称のプロジェクトは、仲間の一人が運営する小さなギャラリーを七夕の数日間だけ写真館にしてしまおう!という企画です。


そして「七夕なんだから写真撮影を申し込んでくれた人に、短冊に願いを込めるように手紙を書いてきてもらおう!」となったそう。手紙に込めた思いをもってカメラの前に立っていただくんですね…。


「手紙を書くということは、自分を見つめなおすことになりますよね。自分の字にも個性があらわれる。大切な人を頭の中に思う浮かべて書くということは大変な作業です。


それは僕が「日常」写真展の中で行ったスマイルプロジェクトで書いてもらった時もそうだった。みなすごく葛藤していた…」


市川さんの多彩な活動のなかで大きな反響を呼んだ企画に「日常」写真展と「スマイルプロジェクト」があります。


放送では時間の都合で触れませんでしたが、市川さんは、奥さんの福島県楢葉町の実家に帰省するたびクラシックなカメラを手に日々の暮らしや田園風景を撮影し続けてきました。ところが震災の原発事故で奥さんのご実家は避難を余儀なくされ、日常の暮らしが失われてしまったのです。


美しい田園風景とともに日々の何気ない暮らしをつづった写真が意味を持つものになってしまったのですね。「日常」写真展はそのようにして生まれました。


一方、市川さんがライフワークとする「スマイルプロジェクト」は、この写真展の会場でスタートしました。こちらは会場に簡単なスタジオを作り、来場者を撮影してその場でプリントアウト。余白に福島や東北の被災地へのメッセージを書いてもらい、会場に張り出すというものです(1枚はご本人用のお土産に)。


どちらも多くの場所で開催され、大きな反響を呼んできました。私、パーソナリティの片方の浅野里香は、震災直後のアロマボランティアで市川さんの「日常」写真展と何度となくコラボさせていただいた経緯から、スマイルプロジェクトを間近で見てきました。


本当にみなさん、自分の顔がプリントされた紙を前にペンを持ったまま考え込んでしまう…。自分の写真とともに表明する言葉というのは、心の深いところを探らなければ出てこないのかもしれません。




それが「七夕写真館」では「手紙」に進化しました。参加者の方々はどのような思いでカメラの前に立つのでしょうか。了解を得られた方は手紙も撮影するそうです。


「前回は、僕の友人が奥さんにあてた手紙とその奥さんが僕の友人にあてた手紙とか、生まれてくる子どもたちへの手紙、亡くなっただんなさんにあてた手紙もありました。たった一枚の手紙なんだけど、手紙を読んで、撮影した時のその人の顔を思い浮かべると人生が垣間見える…。ちょっと泣けてしまいました…」


「七夕写真館」というプロジェクトは、「手紙」によって主催する側と参加する側が一体となる企画なんですね。「企画が素晴らしい」ということで今回参加する方からメッセージをいただいたそうです。ラジオでも読み上げましたがここでも紹介します。詩人の吉成虎維(よしなりとらい)さんの言葉です。


「七夕写真館、賑わうね!

世の中はコロナ禍の只中、五輪の直前、さらには毎日が何かの記念日に埋められている。

しかし、誰しも、一人の人間として過去と未来の間に在り、胸にそれぞれの時計をもっている。

ある季節のそれぞれの時間、を写真に収めてもらおうと集う、人々。

私は私の時間をもっているんだよ、という申込みをされた方々のさりげない意思表示のようにも思ってしまうのは深読みのしすぎだろうか。

いやはや、すばらしい企画です!」


このメッセージに心から感動したという市川さん。ラジオではこんなふうに語ってくださいました。


「時計というのは人生にたとえられるのかなと思いました。季節というのは人生の中のいろいろな時代。いまの季節のめぐり逢いのなかの、大きな流れのなかの時計のひと針が『写真を撮る』ということなのかな…。そんなふうに感じました」


「一人一人の時計のひと針があるんですよね。どこでそのひと針を刻むか=シャッターを押すかと考えると、こう…こっちもシャッターを押す重みが違ってきますね。笑」


詩人のお知り合いの言葉もすばらしいし、その言葉に共鳴して写真表現へとつなげていく市川さんの感性もすばらしいですね。


市川さんは周囲から「市川さんが撮った写真は市川さんが撮った写真だとわかる」といわれるそうです。


放送では今回の企画にふさわしい特別なカメラの話もお聞きしました。興味深かったのは「同じカメラでも撮影する人によって写真の仕上がりは違ってくる」という話題。それが写真表現ということなんですね。その違いはどこからくるのでしょう?


市川さんが被写体(人だけではなく風景も)を見つめるまなざしに、市川さんの人間性があらわれるから?


写真が会話であるともいえるかもしれません。もちろん表現に落とし込むための技術も必要でしょう。


この答えはまた、別の機会に再登場いただいて、ともに探りたいと思います。市川さんありがとうございました。それからこんなに長いブログにお付き合いいただいた方にもお礼を申しあげます、ありがとう。


(あさのりか)


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(wrote by Rika Asano)


「一人で看病してきて大変でしたね」


家族の入院先の看護師さんが、重い荷物を受け取りながら何気なく放った「ひとこと」にどれほど救われたか。


そう中林里花さんは話してくれました。一瞬にして孤独感から解放されたのだろうな、少しの間立ち尽くしたかもしれないな。


とけていくようなその感覚が手に取るように分かったのは、夫の看病から看取りの過程で私、浅野里香にも同じ経験があったからです。


東日本大震災の復興支援でともに活動してきた中林さんから「言葉」を届ける活動を一緒にしないかと誘われたとき、だからとてもすんなりと「ああ、それは私がしたかったことでもあった」と感じることができたのかもしれません。


生きていれば本当に様々なことが起こりますよね。

まるで「すごろく」みたいに。


現実を受け止めきれずに前を向けない時もある。

でもそんな時、誰かのたった「ひとこと」に救われることが、本当にあるんですね。


「ひとこと」に背中を押されたこともありました。

「ひとこと」が道を照らしてくたこともあります。


生きづらさを増すこのコロナ時代に、私たちは自分を支えてくれた多くの「ひとこと」を、世の中に送り返す「場」を作ろうと思いました。


パートナーとしてお呼びするゲストは、自分の言葉で思いを語る人たちです。


ラジオというメディアで「言葉」をとどけ、伝えきれなかった思いは「文字」に残します。


すごろくラヂオ、通称「すごラヂ」。サイコロの目をすべて足すと21になります。だから毎月21日に配信することにしました。


なにかひとこと、心の琴線に触れる言葉を受け取ってもらえたら、こんなにうれしいことはありません。

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